なんだか記憶のことばかり書いておりますが。
数年前、エレベーターに乗るとき、眠そうな男の子と、中学生の姉のきょうだいが、
乗り込んできた。
微妙な年頃らしく、姉は目的階になるとさっさと降りた。
弟は眠いまま、壁にもたれかかり目を瞑っていた。
何となく気がついていた。
きっとこの男児は、私と姉を取り違えている。
私は目的階でさっさと降りた。
背後より、足音。
どう考えても弟。
勘違いを訂正するのも申し訳ない気がして、
廊下を速足で歩き、
部屋に入ると鍵を閉めた。
直後、
がちゃがちゃがちゃ、がちゃがちゃがちゃ。
案の定、ドアノブを懸命に回す音。
因果関係は理解していても、なかなかにホラー。
しゃあねえなと思いつつ、ドアを開けると、
鳩が豆鉄砲をくらったような顔をした弟が立っていた。
あえて知らん顔で「はい」と出てみた。
弟は慌てて踵を返して歩き去った。
帰宅時、玄関扉を閉めるたびに思い出す、あのがちゃがちゃ音。
戦争で市民が最もダメージを受けることの一つに、
自分の家が破壊されること、と読んだことがある。
それほど、プライベートのテリトリーは侵されたくないものなのだなあ。
がちゃがちゃの恐怖、で実感しましたのでした。
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