2017年12月6日水曜日

Bar NEUでリーディングさせていただきました。

久々の、身体の疲れもさほどない状態の休みなので連投。朝活的に。

9月末・10月頭に行った連続リーディング小企画が、思わぬ運びで12月にも延長戦をむかえることになり、無事終えました。

ハコが変わり、出演者が変わると、とても大きく色合いが変わる。と同時に、変わらぬものも見えてくる。私にとっては発見することが多かったです。
9月~12月と、ご参加およびお力添えくださったみなみさま、お運びくださったお客様、本当にありがとうございました。

ちなみに、12月の当パンご挨拶文です。上演にいたる経緯を書かせていただきました。ジャイアン桂ちゃん。


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当作品のリーディングは、今回で3軒目となります。「軒」としたのは、3回とも会場が異なる店だからです。店にはそれぞれ、コンセプトがあり、色があり、匂いがある。どんなふうにお客様を迎えるか、居心地よく過ごしていただくか、それぞれに考え抜かれた工夫がある。その、いわば生活感のようなものに、毎回とても心打たれます。各要素に丁寧に出会いながら、都度新しい出演者と同じ戯曲を読合せする。うすうす感づいていたことですが、この連続企画はとても豊かな営みであることに気付きました。


今回の上演は、鴫原さんがきっかけでした。「豪徳寺に素敵なバーがあるの。平野さんという素敵な俳優さんがいてね、是非ご紹介したくって」と、ある午後の昼下がりにハンドメイドケーキの有名なお洒落なカフェで顔合わせをし、爽やかな笑顔の平野さんがレモンティーの湯気の向うに「こんにちは、初めまして」と現れ…――という形では毛頭ありませんでした。


前回終演後の小打上げ。既に酔いの回りきった顔でいらしてくださった鴫原さんが「面白い。演奏、素晴らしいし。私もやる。相手役は平野さんがいい、絶対。豪徳寺のバー、今から行くよ。…え?来ないの?関係者にご挨拶?んじゃあとからタクシーで。先行ってるから。いいな、おい、絶対来いよ」と優しくお声がけくださりました。私は出演者を見送ったのちの朝3時頃、着信履歴が「鴫原桂」で埋め尽くされたスマホを震える手で握りしめ、タクシーで祖師ヶ谷大蔵から豪徳寺駅に向かいました。千鳥足で植え込みに倒れながら徒歩3分の道のりを30分かけて歩き、どうにか店にたどり着き、そのまま窓際のソファに倒れ込み――薄れていく記憶の彼方、平野さんが優しくお水を出してくださったことを覚えています。


明け方、千鳥足の鴫原さんと二人で、同じく千鳥足で駅まで歩き、呂律の回らないままに「あの店、いいらろ」「ほへ、ええね」「平野さんもええろ」「ほひ、すてき」「んだ、あそこでやるべ」「ふひ、ほへひ」…以上、企画会議終了。

その後、チェリストのあさかさんに、店の大きさにあわせて他の小さい楽器はできないかと無茶なご相談をし、人生で久々にピッコロギタ―を手にとっていただくことになりました。楽器は変わっても、彼女にしかない音色はあるんだなと、これもまた興味深い再発見でした。

というように、不思議なご縁がつながった結果、かなりイレギュラーな形で上演の運びとなりました。また、客席数があまりご用意できないため、積極的な宣伝を行っておりません。その中でみなさまに情報が届いたのも、本当に偶発的な出来事です。年末のお忙しいさなかにお運びいただき、大変ありがとうございます。今回はこの変則的な出会いを、出来る限り遊んでみました。みなさんにどのようにこのお話が届くのでしょうか。
ドリンクとあわせ、お楽しみいただけますと幸いです。どうぞごゆっくり、おくつろぎください。


NICK-PRODUCE主宰


村野玲子

江古田ストアハウスさよなら。

階段をのぼって四階が稽古場、五階が小劇場。階下は漫喫やらインド料理やらの雑居ビル。その、ビルごと壊されるというのだから、生き残りようがない。ということでおわかれせざるを得なくなった江古田ストアハウス。
そのおわかれ会に、少しだけお邪魔してきた。


四階はロビーにいたるまで大騒ぎ。土禁の稽古場入り口前に、脱がれた靴が大量に並んでいる。中では方々で車座ができ、真っ赤な顔の演劇人たちが大声でしゃべってる。煮えてるおでん。この場は何に似てるだろうと思ったら、葬式の精進落としだった。決して暗くない、むしろ酒も入るし賑やか。でも別れを偲んでる。


四階の稽古場は、ほどよい広さで、とても使いやすかった。助手として散々怒鳴られた記憶が主だけど。でも稽古で面白い瞬間が無数にあった。
五階の小劇場は、もちろん芝居を観に行ったし、知人が旗揚げしたときに受付手伝いなどした。消防法で劇場貸しできなくなってからは、稽古場としてお世話になった。
ストアハウスがなかったら、私は江古田に来ることはなかったと思う。


五階に行ったら、何人かが佇んでいた。「僕、ここで旗揚げだったんですよ。」面識なくとも、思わず話しかけてくる。そうせざるを得ない心境はよくわかる。
四階五階から、いったいどれくらいの芝居が産まれたのかと思うと、気が遠くなる。無数の情念を、世に放った。そんな匂いがした。大の字に寝転んで、記念写真を撮った。




もう二度と会うことはない。
さよなら、江古田ストアハウス。
ありがとう。おつかれさまでした。