2008年3月31日月曜日

古本屋のゴロウ

先日
家のそばの古本屋の前を通ったとき
そこの息子 ゴロウについて思い出しました


あまり話したことはなかったけれど
私とゴロウは少しは知り合いで
古本屋の前を通ると
「よっ」「おっす」と声をかけあうことはありました


そのゴロウは
消えていました


店から消えたということではなく


ゴロウを私に紹介してくれた友人に
「最近ゴロウ見かけないけどどうしてる?」
と尋ねたところ


ゴロウはね
消えたんだよ


との回答


よく意味がわからず
混乱半分で問い直してみると


不安定だった彼は
佐渡島に行く途中の船で 急に大声をあげ 暴れ出し
まわりが止めるのも聞かず 冬の海に消えてしまったとのこと


消えた


その頃私は
人が消える話を書いていました
人が一人消えて 周りがその人のことについてあれこれ思いをめぐらすという大枠


消えるってどういうことだろうと考えているときに
そんな話を聞きました


不思議なほどに 現実と虚構はリンクします
呼び合うように 求め合うように


そのはざまによく落ちこみ 媒体となっているような気がする自分は
いったい今 何を目に耳にしてしまったのだろうと
ふと恐ろしくなることがあります


とくに
台本を書いているとき 
よく起こります


虚構なしでは現実は語れず
現実なくしては虚構は成立しません


現実は 虚構の成る畑のようなものなのかも
虚構は 現実の様々な事象から栄養も毒もたっぷり吸収して
様々な形の実を結ぶ


現実を
よりシビアに知っていくことが
より豊かな虚構を結ぶことになるような気がしております


そして現実を見るメガネとして
数多くの虚構が必要だということ


そうしたローテーションが
常に 新たな地平に導いてくれるということ


そうしたことを
ゴロウのことを考えているうちに
思いました。


ゴロウよ  冬の海は寒かったろう
一緒にアトリエでタバコをふかした時間は忘れないよ


どこかにいたら 連絡をおくれ


にくお

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

勉強になります。

Unknown さんのコメント...

∑(-△-;)

恐れ多いっす…