2009年3月13日金曜日

【BOOK】『冷血』カポーティ

聞けば、これ以降にカポーティは世に作品を問うことがなかったと言う。


そりゃそうだ。
犯罪者とは言え、自分の半身のように思えた人間が、目の前で絞首刑にあったのだ。
書きたくても書けない。書いたとしても、自分の中の何かが受け入れないだろう。


それほどまでに、書くとは生きる営みだ。
自らの死の可能性を意識すればするほど、生を強く追い求める。
しかし、既に自分の一部が死んでしまったような感覚に陥ったら、その死を凌駕するほどの危機に出会わない限り、生を取り戻すことはないだろう。


かつカポーティは、そんな危機に出会うには、絶望を知りすぎていた。


孤独のレッスン、その1。

絶望の果てにこそ希望は漂うが、
手に届くには危機を契機とする大跳躍が必要である。


かしこ。

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