2008年10月22日水曜日

貧窮問答

金がないことから得た生活の知恵の一つ。
自炊。


外食の代わりに、食材を買い込んで料理したほうが、
自分の好きなものを、自分の好きなように味付けして楽しめることを、
ようやく理解した。


昔から何かしか作ってはいたが、あまり美味いとは思えず、
結局外食のほうが自分を楽しませる術になっていた。


しかし。
食材の個性や旨みを少しずつ意識するようになると、
自炊の方がだんぜん楽しく、そして美味しく。
作るプロセスを楽しむことも含めれば、満足度は断然上がる。
そんなことを、実家を出て14年目にして、ようやく悟った。
遅い。


楽日の翌日。
打ち上げでは食事が咽喉を通らず、餃子を食べ損ねた。
それがどうにも心に引っかかり、しかしレトルトを買うのも何なので、
ニラや挽肉を買い、餃子の皮にせこせこと包んで、焼いた。
なかなかに美味い。


何であれ、作成するプロセスを厭わないことである。
自炊を怠る原因の一つに、面倒だから、というものがある。
この面倒を、手間ひまかけて作る喜びに、いつしかすりかわれば、
台所はクリエイトする現場になる。


まな板の上も、フライパンの上も、冷蔵庫の中も、
どこも稽古場のようなものである。
食材の個性を考え、仕上がりをイメージし、各パートごとに分けて下ごしらえをする。

キャベツを千切りにし、ニラを刻み、挽肉と和える。
酒や醤油、にんにくを入れ、味付けをする。
そういったこと一つ一つが、食事という本番に向けてなされる準備である。


火加減の調節は、ダメ出しのようなもの。
火を通すことで、どのような影響が食材に現れるか。
注意して見守っていなければならない。
蒸している時間は、熟成を待つ時間。
役者が考え、ある解釈や行為を生み出すのを、ただひたすらに信じて待つ。


仕上がりが美味しいと、次は何を作ろうかと心が躍り、
レシピを見たり、考えたりすることが楽しくなる。


成功体験とは、この程度のものの積み重ねなのかも知れない。

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