2008年5月3日土曜日

【BOOK】『見張り塔からずっと』重松清

なぜか久しぶりに読みたくなった重松清短篇集。
ニュータウンに暮らす人々のお話が、三つ。
閉塞感の中、どうにか生きようとあがき、もがいている人々の姿が、
痛ましくも、ギリギリ微笑ましい印象を残しつつ、描かれている、ような気がします。

ざっくりラフ。
一つ目は、団地の中での『いじめ』。ある一つの家族を集団で疎外し、いたぶっていく様を、
いじめに加担する側の夫婦の視点から描きます。
二つ目は、まだ幼い子供をなくした夫婦が、お互いをどうにか癒しながらも効果なく、

絶望の淵に少しずつ追いやられていく様が描かれています。
三つ目は、新居を手に入れたばかりの若い夫婦の、各々の理想の絶望的なまでのすれ違いを描きます。


どんな環境にあっても、人はそうやすやすと絶望しない。
このことは、これまで様々な文学やドキュメンタリーの中でも語られてきたことでしょう。
でも、極端な状況下ではなく、一見幸福の条件が満たされているような体裁の中で、
自分たちが絶望していることに無自覚なときに、
人はひょっとしたら、希望という名の下に、絶望を増幅させていくのかも知れません。

抽象的な表現ばかりが連なりますが。
ただ生きていく、生活していくとは、
絶望を希望の中に塗りこめていく作業なのかも知れないなと、
何となく考えた次第です。


なーんてこと考えてても、明日は勝手に来ちゃうんですけどね。
ハハハ。


にくまろ。

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